社長のふと思う 第二十回 「ニャースケ その3」
ニャースケとの毎日のデートが日常の一コマになってから何ヶ月かが過ぎた。
例によって、ニャースケの名前を呼ぶと、その日はグラウンドの脇の駐輪場とおぼしき所(簡単な屋根がついているが、実際、自転車が置いてあるところは見たことがない)の植え込みから姿を現した。するともう一匹、ニャースケと同じくらいの体の大きさ(ニャースケは割りと小柄である)の白い猫が植え込みから出てきた。動物に関しては博愛主義の私は、しょうがないなと思いながらその白い猫にも餌をあげた。ニャースケは牛乳が好きなので、毎日あげているが、その白い猫もニャースケを押して自分も飲んでいる。仲の悪い猫同士だと餌場で顔を合わせようとものなら、すぐ「フーッ!!」「シャー!!」とバトルになるが、ニャースケは別段気にする様子もなく、顔を洗ったり毛づくろいをしている。その白い猫も牛乳を飲み終わってから同じことをするのだが、ニャースケの側にいって、ペロペロとニャースケの毛づくろいをしてあげている。ニャースケもされるままにじっと気持ちよさそうにしている。
「ニャースケがそうやってジッとしているのも珍しいね。仲良しなの?」
と声をかけると、その白い猫は今度は私の方へ来てスリスリして甘えてくる。人懐っこい猫ではあるが、どこかで飼ってもらっているふうでもないし・・・・・・。そして、その日以来チロ(先にシロと名付けているオス猫がいるので、シロではなくチロという名にした)は、ニャースケと一緒に姿を現すようになった。しかも場所も初めてチロが出てきた所に定着した。
雨の日も風の日も、台風のときは過ぎるのを待って(時間は夕方になってしまう時もあったが)、お正月休みも、ゴールデンウィークも夏休みも、春も夏も秋も冬も、ほぼ毎日そんな穏やかな日々が続いた。チロは以外と「がっつきさん」なので、先に食べ終わったニャースケにブラシをかけたり、お腹を撫でたりと信じられないくらいニャースケもなつくようになっていた。(捕まえることは相変わらずできなかったけれど。)
ある日、グラウンドに五匹の中型犬を連れて散歩に来ていた人が、運動させようと放したら、一斉に餌を食べているニャースケたちのほうへ向かって走ってきた。その時のニャースケとチロの素早いこと!十メートルほど先の大きな木に、あっという間に駆け登っていた。犬たちは猫より餌に興味があったようで、大きな口で一口、二口で食べ終えてしまった。きっとその時の私は呆然として、さぞかし間抜けな顔をしていたことだろう。そして、なんと見覚えのある毛並みの五匹の犬たちは、私が二十代の頃に飼っていた犬の子供なのである。その犬(チョビという。雌だったが男顔だったので)も、京浜島の野良犬だった。保護したときにはすでにお腹が大きくて、やむなく六匹の子犬が産まれた。そのうちオス三匹は京浜島の人が貰ってくれた。そのうちの一匹の末裔なのである。(チョビの話はまたいつか別の時に・・・。)
話はそれてしまったが、そのような訳で犬たちのことも怒るわけにいかず、ニャースケたちが降りてくるのを待つしかなかった。犬たちは、当然飼い主にひどく怒られて、しっぽを下げて帰って行った。
「ニャースケ、あんな足で登ったはいいけど、ちゃんと降りてこられるのかな。」
と人の心配をよそに、一時間ほどしてまた様子を見に行ったら、もう木の上にはいなかった。ホッとはしたが、その日はもう名前を呼んでも姿を現さなかった。
チロは「ニャースケ」と呼んでも飛び出してくるほど慣れてきた。最初はあまり仲がよいのでチロのことをメスかと思っていた。でも、よく観察するとオスなのである。我が家でも、会社でも以外なほどオス猫同士は仲が良い。最近はライオンもオス同士で仲良く群れているグループもあると、テレビで観たことがある。ネコ科は同じだからそんなものかなとも思い、微々笑ましく見ていた。
(続く)
Yuri
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